帰りたくない、と口に出したことはありませんでした。家族に言えば責められそうで、自分でもそんな自分を許せない気がして。ただ、予定を決めるときの重さは正直でした。今日はその気持ちを、なかったことにせずに書いておきます。
最初に書いておきたいのは、この気持ちは怠慢でも冷たさでもない、ということです。私の場合、理由はいくつも重なっていました。
この気持ちを家族に話したとき、介護や手続きの都合で「では私が行く」と返ってきたことがありました。ありがたかったのですが、同時に少しつらくもありました。行きたくないという話と、行けないという話は、別ものだからです。
どれも、行きたくない理由としては十分すぎるものでした。気持ちを否定したまま予定だけ組むと、行くたびに消耗して、判断の質も落ちていきました。
罪悪感は、ひとつの塊のままだと重すぎます。私は紙に分けて書きました。
分けてみると、親への申し訳なさ以外は、他人の目や段取りの問題であることが多かった。親への申し訳なさは消せませんが、残りは設計で減らせるものでした。
「帰るか、帰らないか」ではなく、「帰らない前提で、何をどう保つか」に置き換えてみました。
現地で開けられる人を決めておくと、自分が行かなくても中を確認できます。鍵の預け先と、開けた記録の残し方(写真を送ってもらうなど)を先に決めておくと、後で揉めません。
転送の手続きをしておくと、自分が行かなくても内容を把握できます。名義が残っている支払いの類は、この機会に一覧にしておくと、いずれ必要になります。
茂ると近所の印象が変わります。庭は、いちばん先に外から見える部分だからです。自分で行けない場合は、手入れだけを任せる形があります。
すべての挨拶を自分が担う必要はありません。連絡先を1つ渡しておき、何かあったときに連絡が来る形にしておくと、行かないことの不安が減りました。
帰らないと決めたとき、いちばん気になっていたのは、きょうだいに負担が寄ることでした。だから私は、行く代わりに何を出すかを先に決めました。
行けないことを埋め合わせるのではなく、担当を分けるという感覚です。役割を分けてから、きょうだいに「行かない」と言いやすくなりました。何も出さずに行かない、という形は、自分がいちばんつらかったです。
帰らないと決めても、確かめずに置くと選択肢が減っていきます。私が先に確認したのは次の点でした。
特に最後の点は、帰りたくないという気持ちを、そのまま相手に押しつけないために必要でした。行かない代わりに何を出すのかを、自分で決めておく。それができると、気持ちの後ろめたさが少し軽くなりました。
※手続きや制度の扱いは地域と状況によって変わります。判断は専門家に確認してください。
帰りたくないという気持ちは、そのままでかまいません。行けない前提で何ができるかを知っておくと、選択肢を減らさずに済みます。
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帰りたくない、という気持ちは、家を嫌いになったという意味ではありません。思い出すのがつらい場所になっただけです。その状態のままで何を決められるかを探すほうが、私には現実的でした。